INDULGENCE

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「一応治しはしたが...どう考えても本調子じゃねえだろ 無茶はするんじゃねえぞ」

マツィヤがぶっきらぼうにダルヴァに声を掛ける ダルヴァの片腕の治療は不完全で戦闘に耐えうる強度は持ち合わせていないのは明白だ

心配されている本人は碌に聞かずに蹴りで壁を破壊しながら陛下の元へと向かっているのだが

「しかしのう...聖別されていないというのはどうにも違和感がある

可能性としては治療薬を得るために来るのを待っている線があり得るが微妙なところじゃのう」

さっきまで死にかけていた割に元気でいつも通り話の聞かない爺である...マツィヤが呆れ顔をしていたのも束の間ようやくユーハバッハの姿が見えた

先に来ていたらしい恋次とルキアがいる ダルヴァの姿に驚き刀をそちらに向けるか逡巡していたのが見て取れたがそんなことは置いておこう 

「何故ですか陛下!何故儂をその御力へと連れて逝ってくださらなかったのですか!」

今 ダルヴァにとって最も大切なのは信仰の根幹を確かめる事のみ...ダルヴァの人生は

「お前は誰だ」

神に見放され忘れ去れらたものだったようだ


ただ驚き言葉を失ったダルヴァにユーハバッハは軽く答える

「いや 誰であろうと関係は無い...仮にどのような立場の我が子であれもう必要ではないのだ」

「ほう そうか死ね」

驚くほど淡々と今まで神と崇めていた男に傷負った片腕を向けるダルヴァだが 霊王の力に塗りつぶされたのか知らない耄碌した爺と言えど力は確か

腕だけでなく片足まで骨の芯から圧し折られていた 

ユーハバッハは門を残してその場から消えた 

「殺してやる 殺してやるぞユーハバッハァァァァ!!」

慟哭しつつも復讐を誓うダルヴァに対し他の面子は何とも言えない顔をしている

「マツィヤ殿...ダルヴァ殿は滅却師側に付き従っていたのでは?」

「ダルヴァの野郎がオマエを捨ててアッチに付いたから ずっとオマエがダルヴァを殺そうとしているって聞いてたんだが...」

ルキアも恋次も困惑している マツィヤは冷静にただ答える

「今のやり取りで確定したけどよ ダルヴァの奴忠誠誓ってたやつにそもそも存在を覚えられてなかったんだとよ 気が抜けてたのか俺にも負けてたし...なんかもう色々アホ過ぎて殺す気が無くなっちまった」

先程までの緊迫した空気に随分温度差のある風が吹く

「時折変な勧誘をしていた宗教の神に直々に忘れ去れていたのか...何というか哀れというか 因果応報といった所であるがな」

ルキアが可哀そうな物を見るような目でダルヴァに視線を送っている 恋次は恋次でマツィヤとダルヴァを見て

「なんだかんだ似てんなオマエら 信を置いていたモノに裏切られたらとりあえずぶっ殺すってなるとことか...」

井上は倒れていて回復が多少できそうなのはマツィヤだがそう時間を掛けていられない 出来るだけ準備はしつつ彼らは門へと向かった



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